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処置指針(対医療機関)

応急措置方法

医師に対する特別注意事項

   モノクロル酢酸は皮膚を浸透し、血液および細胞の成分と反応し即座にモノクロル酢酸ソーダを形成し、脳を含めた他の組織に血液を通して進行していく(細胞の破壊)、さらに高濃度のMCAと血液、細胞成分の相互作用によりモノクロル酢酸化合物を形成し、重大な症状を引き起こすと考えられることから、迅速な対応が必要。皮膚についた場合、最も大切なことは一刻も早く重曹水に漬けるか、または大量の水で洗い流すことである。可能なら約3〜5%の重曹水の風呂(25〜35℃)に最低4時間以上(薬傷の白い斑点が消えるまで)漬ける。薬傷範囲が1%以上の場合は重大な災害となる可能性があることから、24時間以上、症状の連続監視を行う。症状の悪化は嘔吐、血圧低下で現れる。皮膚の治療薬としては、フラマジン軟膏、ヒルロイド軟膏を使用。治療例としては、血圧測定、血中のモノクロル酢酸分の測定、人工呼吸、人工蘇生、N-アセチルシスティン治療(解毒治療)、血液透析、血漿交換、アルカリ化がある。

モノクロル酢酸薬傷時の対応方法に関する指針

モノクロル酢酸は、極めて腐食性、浸透性の強い物質であり、取扱においては充分な注意が必要であることはもちろん、薬傷災害が発生した場合は、一刻も早い処置こそ重大災害を防止する効果的な方法になります。
以下に、MCA薬傷時の対応方法に関する指針についてまとめます。

1.応急処置の方法

1)皮膚についた場合:
共通事項

モノクロル酢酸が皮膚についた場合、最も大切なことは一刻も早く重曹水に漬けるか、又は大量の水で洗い流す事である。 可能なら、約3〜5%の重曹水の風呂(25〜35℃)に最低4時間以上(薬傷の白い斑点が消えるまで)つかり、必要により医師の手当てをうける。 汚染された衣服は上記処置を行いながら脱がせることが望ましい。

※薬傷を受けた皮膚の治療用として、フラマジン軟膏(Flammazine)やヒルロイド軟膏を使用している。

薬傷範囲が1%(手のひら程度)未満の場合(軽度な災害の場合が多い)

:共通事項の対応を迅速に実施。

症状が軽い場合(第一度、第二度のやけど程度)は、軟膏を塗布し、水泡が出来た場合は水泡を破らずにソフラチュール(化膿止め、フラジオマインシンガーゼ)を貼付する。
症状が更にひどい場合は医師の治療を受ける。

薬傷範囲が1〜5%の場合(重大災害となる可能性大)

:共通事項の対応を迅速に実施。

病院に搬送し、医師の診断、治療を受ける。
搬送の際は、重曹を携帯することが望ましい。
必要により、24時間以上の入院をさせ、症状の連続監視を行う。

→症状の悪化は、嘔吐、血圧低下で現われる。

薬傷範囲が5%以上の場合(極めて重大な災害となる可能性大)

:共通事項の対応を迅速に実施。

救急車により病院に搬送し、医師の診断、治療を受ける。
搬送の際は、重曹を携帯することが望ましい。
患部の、重曹による中和は、輸送中も絶えず行う。
必ず24時間以上の入院をさせ、症状の連続監視を行う。

→症状の悪化は、嘔吐、血圧低下で現われる。

薬傷が広範囲の場合や症状が重く(第三度、第四度のやけど程度以上)病院への搬送が出来ない場合には、直ちに医師を現場に呼び、その指示に従う。

(参考)やけどの程度

  • 第一度…皮膚が発赤してひりひりする状態
  • 第二度…水泡ができる
  • 第三度…皮膚がただれて壊死する状態
  • 第四度…組織が焦げる状態

薬傷範囲の具体例
こちらをご参照下さい

2)目に入った場合:

角膜及び瞼に損傷を与えるため、直ちに大量の0.9%食塩水又は清水で充分洗眼し、必ず眼科医の手当てをうける。
洗眼は、瞼を親指と人差し指で広げて行うと効果的である。

3)吸入した場合:

患部を毛布等でくるみ安静にさせ新鮮な空気の場所に移す。
直ちに患者を病院に搬送する。
患者が呼吸困難な場合又は呼吸が停止している場合は直ちに人工呼吸又は人工蘇生器を使用する。

4)誤飲した場合:

口をすすぎ、水を飲ませる。(但し嘔吐をさせないようにする。)
安静にさせ、新鮮な空気を吸わせ、物に寄り掛かったような姿勢を保ち病院へ搬送する。

5)その他:

モノクロル酢酸に触れたり摂取したりその蒸気にさらされた恐れのある場合、又はその症状が認められる場合は、必ず医師による診断を受けて下さい。

2.医師による治療の例

モノクロル酢酸による薬傷災害では

  • 血圧低下
  • 嘔吐
  • 胸部の圧迫感
  • ショック状態
  • 昏睡

が代表的な症状である。医師はこれらの症状に応じた対応を行う。その例については以下の通り。

  • 血圧測定
  • 血中のMCA分の測定
    MCAが皮膚を通して浸透した程度を測定する。
  • 人工呼吸、人工蘇生
  • N-アセチルシスティン治療(解毒治療)
  • 血液透析
  • 血漿交換
  • アルカリ性化

従来、エタノールの点滴又は服用が血中のMCAの代謝作用を促進するとして適用されてきたが、最近のヨーロッパにおける研究では、その効果が少ない事がレポートされている。

3.モノクロル酢酸薬傷のメカニズム

<Akzo Nobel 資料より>
  1. モノクロル酢酸は、極めて皮膚浸透性が高いため、即座に皮膚表面から吸収され、部分的に激しい薬傷を引き起こす。
  2. 浸透したモノクロル酢酸成分は、血液及び細胞の成分と反応し、即座にモノクロル酢酸ソーダを形成し、脳を含めた他の組織に、血流を通して進行していく。(細胞の破壊)
  3. 更に、高濃度のモノクロル酢酸と血液及び細胞成分の相互作用によりモノクロル酢酸化合物を生成し、重大な症状を引き起こすと考えられる。
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